書評「投資としての読書」−役に立つ読書をするには−

最近読んだ本について5分で説明できますか?

質問です。

あなたは最近読んだ本について5分あるいは15分といった時間でその魅力を伝えて、そして人にその本を買ってもらうことができるでしょうか?

ほとんどの人はそもそも5分で読んだ本について説明することも難しいのではないでしょうか?

たとえ心から感服してぜひ人に勧めたいと思った本でも、です。

少し考えてみて欲しいのですが読んだ本について説明できないこの状態、本当に本を「ちゃんと読んで理解した」と言えるのでしょうか?

ここまで読んで自信が揺らいでしまった方、そんな人に勧めたいのが今日取り上げる「投資としての読書」です。

投資としての読書(本山裕輔、フォレスト出版、2023年)

この本を選んだ理由

ブログの参考にするためにいくつか書評サイトを見ていたところ、とある書評サイトが非常に分かりやすく本の内容と魅力を伝えていました。どのような本なのか自分でも読んでみたいと感じましたし、一冊は実際に購入を決めるまでに至りました。

そのサイトが著者の本山裕輔さんが運営するビズペラというビジネス書の書評サイトです。

BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで-

よくできたサイトだなぁと思って見ていたところ、近々読書術についての本を出版するという記述がありました。丁度書評ブログを始めたところですから、読書術の本をこの段階で読んでおくのは悪くありません。こういった偶然の出会いは大事にするようにしています。サンプルや目次を確認してもやはり面白そう。購入決定です。

どのような人が対象か?

おそらく本来この本の主要な対象者は限られた時間の中で効率よくビジネス書を読みこなしたいビジネスパーソンの方だと思います。それは著者が運営するサイトがビジネス書の書評を中心としていることからも明らかです。

しかしこの本に書かれている考え方はビジネス書のみに当てはまるものではありません。もっと応用範囲の広い考え方が示されています。

私はこの本は独学を目的として本を読む人であれば、きっと参考にできる点がある本だと思います。

それはこの本が読書を「独学の全体像」の一部として位置付ける形で取り扱っているからです。

「アウトプットありきの独学サイクル」とは?

それでは独学の全体像とはどのようなものでしょうか?

この本においては効果的な独学のサイクルとして「アウトプットありきの独学サイクル」を提唱しています。

多くの人はインプットを先に行い、ある程度の知識を得たらアウトプットしようという考え方で学習を進めます。しかしこの本では先にアウトプットをすることによってインプットの解像度を高めるべきであると主張されています。

実際、私の経験から言ってもアウトプットをすることで今の自分に足りていないことや重点的に鍛えるべき部分が見えてくるため、より解像度の高い視点を得ることができます。そしてそのような視点を得ることで自分の中に「網」や「フィルター」のようなものが作られるのです。

インプットをする時にこの「網」があるかないかでは大きな違いが生まれてきます。「網」がなければ見逃していたような情報が「網」に引っかかってくるのです。

しかも物事を自分の経験と結びつけて覚えることができるようになります。人間の記憶は意味記憶やエピソード記憶、情動記憶といった異なる形式で保存されていますが、本で読んだだけだと単なる意味記憶で終わっていたものがエピソード記憶や情動記憶と結びつくことでより強くかつ有機的なつながりを持って記憶の中に組み込まれます。

そしてインプットを通じて得た学びを生かして新たなアウトプットをしていくことが出来ます。さらにアウトプットから得た経験やお金をインプットに変えます。このアウトプットが先行する形でのインプットとアウトプットのサイクルが「アウトプットありきの独学サイクル」です。

独学の中での読書の役割

さて、それでは読書はこの中でどのような役割をしているのでしょうか?おそらく2つの役割があると思われます。

1つは本で得た知識自体をインプットとするものです。例えば英語学習で例えるならば新しく単語帳を買ってその内容を覚えるようなものです。

もう1つの役割は経験を解釈するための概念化のプロセスでの精度を高めるという役割です。例えば文中で不自然な単語の使い方をしてしまった時に「単語の使い分け辞典」のような本を参照して適切な使い分けを覚えたり、なぜ間違った使い方をしてしまったのかを自己分析するというような使い方です。

後者は言ってみれば経験に対するフィードバックの役割を読書が担っています。上記の「アウトプットありきの独学サイクル」の考え方からするとこちらのタイプの読書の重要性を強調する方が著者の意図に沿っているでしょう。

資産になる読書とは何か

さて、上記の「アウトプットありきの独学サイクル」を回していくためには1つ重要な点があります。

それは読んだ本を「アウトプットするための資産」にしなければならないということです。それがすなわち「投資としての読書」です。タイトル回収ですね。

確かに読書をしたことでスキルアップなどの効果が得られなければ新たな経験をする機会も得られませんし、収入も増えないでしょう。そして読書を資産にすることは単に収入を上げるという目的だけでなく、独学の成果を上げるためにも重要であることがわかります。

それでは資産になる読書とはどのようなものでしょうか?

それは「本から得た知識やスキルを利用して継続的により良い収入や人間関係、健康などの価値を生み出せる状態」を得るというものです。

どのようにして読書を資産に変えるのか

「投資としての読書」では以下の2つの観点から読書を資産にする方法を考えます。

  • 何を読むか
  • どう読むか

これらに対して「二刀流選書術」という選書のコツや、本を紙一枚に要約する「ペライチ整理法」が提唱されます。

その全てを紹介するわけにはいきませんが、冒頭で「本を5分で説明する」という話をしましたので、この記事では「ペライチ整理法」を使って「投資としての読書」について簡単にまとめてみましょう。

実際に本の内容をペライチにまとめてみる

今回はペライチ整理法のうちの「シンプル箇条書き型」を使ってみましょう。

これは「本の問い」「問いに対する答え」「具体的な方法論」の3つの観点から分析してそれぞれ箇条書きでまとめるというものです。私なりに要約したところ以下のようになりました。

①問い

  • 読書で日々の生活を改善していくにはどうしたら良いか?

②問いに対する答え

  • 読みっぱなしにせず、継続的に価値を生み出す「資産になる読書」をする必要がある
  • 読書を資産にすることで「アウトプットありきの独学サイクル」を回せるようになる

③具体的な方法論

  • 有用な本だけを読む「二刀流選書術」
    • 短期的なアウトプットのために読む本と長期的なアウトプットのために読む本を分ける
    • 鍛えたいスキルに集中する
    • 本を読む前に問いを明確化する
    • 本を選ぶ際の基準を事前に決めておく
  • 要点を紙一枚にまとめる「ペライチ整理法」
    • 問い・答え・根拠を抜き出す
    • ペライチの型を使って要点を紙一枚にまとめる

以上となります。

このように要約する技術を身につけていくことによって、より効果的に読書をアウトプットに繋げられるようになるのではないでしょうか。

終わりに

「投資としての読書」 では本を要約することを通じて本を資産化する方法を説いていました。本で得た知識を生活の中で活かすというテーマを最近意識していた私にとっては非常にいいタイミングでの出会いだったと思います。本書で紹介されていた「資産本」もいくつか購入してしまいました。

その一方で今回記事を書く中でいくつか疑問も湧いてきました。

要約することによって削られたものの中にも使えるものがあるのではないか?

自分の知識や経験とどのように関連づけるのか?

要約から書評というアウトプットをするためにはどのように肉付けをするのか?

おそらく著者の本山裕輔さんはペライチに要約するだけでなく他にも読書メモを書いているのでしょう。さらに書評記事を書くプロセスでより深い学びを得ているのかも知れません。その意味ではこの本は本山さんの読書と学びに関わる活動の全容をカバーしているわけではないと言えるでしょう。

ところで「投資としての読書」 の読書メモを扱った章では「読書メモの禁じ手」が取り上げられています。そしてそこで一冊の本について軽くですが触れられています。

その本が「TAKE NOTES!」です。

私は少し前にこの本を読んだのですが、思い返してみれば上記に書いたような疑問に対しても答えを与えてくれるような内容だったように思います。

というわけで次回は「TAKE NOTES!」を取り上げたいと思います(予定は変わる可能性もあります)。

この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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